空き巣という職業柄、いろいろなマンションのエレベーターに乗る。(こういう冗談を真に受ける人がいそうなので怖い。本当の職業は忍者である)
エレベーターの中で、「ペット」と書いてあるボタンを目にしたことがある。
何だろう、このボタン。
ペットだったら押せばいいのだろうか。
僕はそこそこ大人のポメラニアンではあるものの、まだ誰にも飼われていないので、ボタンは押さなかった。
でも、もし押したら何が起こるというのか。見当がつかない。
例えば、ペットが急な上下運動に驚いてパニックになると困るから、エレベーターの運転がゆっくりになるとかそういうことだろうか。
それとも、ボタンを押すと、横の壁から、人の手がにゅっと出てきて、ペットボトルのお茶をほいっと渡されるサービスなのだろうか。(お茶を受け取ると手はすっと引っ込むので心配ない)
ネットで調べてみる。
どうやら、ペットを連れている人がそのボタンを押すことで、他の階でそのエレベーターを待っている人に、ペットが乗っていることを知らせることができるらしい。
「ペットが乗ってます」と、外に知らせるためのボタンということだ。
外の人は、それを見て、「動物が苦手だから」とか、「アレルギーが……」とか、「自分もペットを連れているから興奮させないように」とか、「ペットを連れてる奴って、『ペットを連れてる自分って素敵』みたいな空気出してきて、大抵いけ好かないから」などの理由で乗り合わせたくなかったら、そのエレベーターは呼ばずに回避したりすることができるのだという。
なるほど。そういうボタンなのか。
それを知ってまず思うのは、
「ペットによらない?」
子犬とかだったら、乗り合わせてもいいけど、ローランドゴリラとか、ツキノワグマとか、ケルベロスとかだったらあまり一緒に乗りたくない。
さらに思ったのは、
「気の遣いすぎじゃない?」
このボタンは、本当にあった方がいいのだろうか。
僕には、このボタンが、すごく不自然に感じられる。ボタンがあることで、不要な義務が増える感じ。エレベーターは全ての人に平等に与えられるべきなのに、このボタンがかえって飼い主側の「遠慮」を強制的に意識させることになる気がする。「遠慮」は自発的にするから美しいのであり、強要すべきことではない。
例えば、ボタンを押し忘れたり、誰もいないだろうと思って押さなかったりしただけで、「なんで押しておかないんだ」と責められるのも、飼い主は辛いだろう。ペットを飼うことに負い目を感じさせられそうである。
まあ、確かに、エレベーターを止めておいて、「やっぱいいや」となるのは、お互い気まずいだろうけど。エレベーターという乗り物自体、そもそもそういう性質のものだから、仕方ない気もする(僕もエレベーターは未だに苦手である)。
その時その時で、当人同士でどうにかするという自然なことを、面倒くさがらないこと。その中で自然に生まれるコミュニケーションをしっかり経験すること。それが、結果的にエレベーターを利用する人や、ペットを飼う人のマナー向上につながると思う。
まあ、僕は全く部外者なので、当人たちがよければ別にいいのだけど。
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