『フリーター、家を買う。』

昨日紹介した『Story Seller』の中の有川浩さんの『ストーリー・セラー』。面白かったのだけど、レビューとか読むと、批判的な意見も多くて、好みが分かれるようだ。

人の小説に批判的なことを言う人を見ると「じゃあ、お前この人より面白いもの書けんのか」と胸ぐらを掴みたくなる。

人に言わせれば、評論も立派な仕事なのだから、「お前は書けるのか?」なんて言うのは的外れなんだろうが、僕も小説を書きたい立場だから、小説に対する批判的意見は誰に向けられたものであれ、胸が痛む。

こんな面白いものを書いても悪く言われるんじゃ、僕なんか何を書いたって唾棄されるだけじゃないか。絶対傷つく。小説なんて書きたくない。

だからみんなに言いたい。あらを探そうみたいな、ひねくれた目で読まずに、もっと素直に読めば、ほとんどの本は面白いじゃないかと。「楽しませてみせろ」じゃなくて「自分から楽しみを迎えに行こう」よ。どうせ自分の時間を割いて読むのだから、楽しんだほうがいいよと。



さて、有川浩さんの本で言うと、『フリーター、家を買う。』は読んだことがある。



結構面白かった。

『フリーター、家を買う。』というタイトルにも関わらず、主人公は就職し、新入社員採用を担当することになる。

この時、ダメだった頃の自分が就職活動をした時にやっていたような、手抜きや横着をしてくるやつを落とせばいいという発想から、ウェブの応募フォームはダミーとして、フォームから応募する人はその時点で不合格、みたいなやり方をする。

僕はこういうのが嫌い。自分が採用する側だからって、権力があるからって、人を馬鹿にしている。

そうやって落とされた人の中には、真剣な人もいるだろうに……。

そういう不誠実なことをする会社があるなら、すぐ潰れて欲しい。どんな思いで応募しているかわからないくせに、フォームから応募したからなんて理由でダメだと決めつけて、話も聞かず門前払い。せめて、もっと人間扱いしてあげて欲しい。

ダミーにするくらいなら、はじめから電話だけの募集にするべきなのだ。

「それじゃあ、人を絞り込めない」? 知るか。試験を受ける側の方が大変なんだ。会社の側だって、苦労して、悩んで、苦しんで人を採用しろ。その上で不採用にするなら、それを申し訳なく思え。

全体的に楽しく読ませてもらったけど、そこに関しては、すごく不愉快だったなあという記憶がある。

これは、この小説の主人公に対する嫌悪で、別に、小説自体を否定しているわけじゃないですよ。

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