ほんとうに大事なこと

面白いことを、よく考えつくような人になりたいという欲求がある。

そういうことについて考えてみる。

次のようなことが教科書に書かれていたとする。

「氷は熱によって溶けて水になる。同じように鉄も加熱すると溶けて液状になる。このように、固体が液体に変わることを溶解という」

これで、大事なところにアンダーラインを引きなさいという課題が出された場合どこに線を引くだろう。

受験や試験のために大事なところは、おそらく「溶解」だから、「このように、」のうしろから線を引くことになるのだろう。

そのほうが、効率的にテストの点数を稼ぐことができるのだから。

でも、最近僕はつくづく思っている。

ほんとうに大事なのは、この場合、氷が水になることだったり、鉄が溶けることの方なのだ。

そういう事実がこの世の中にはあるということ。その事のほうがよほど大事なのだ。

「溶解」という名前が付いているが、そんなの、別になんだっていい。

「溶解」という言葉を忘れても、水が氷になることを不思議がって、大切にできるような人が、面白いことを考えられる人になれるのだ。いや、二歩譲って、面白いことを考えつかないとしても、そのほうがずっと豊かな人生が送れるように思う。

この例だけではない。他の科目も全てそう。ほんとうに大事なのは、大抵、線が引かれない方だったのだ。

僕はわりと空気を読める生徒だったのか、試験で点をとるために、素直に、大事だと教えられてきた方を勉強してきた。

でも、いま、そのせいで、結構壁にぶつかっている気がする。

ほんとうに大切なことをないがしろにして来てしまったんじゃないかと。

学問は一般化したがる。でも、世界に存在するのは、具体的な何かでしかない。ありもしない一般的、抽象的なものを見続けた結果、具体的な、ほんとうにあるものを、見ようとしなくなってしまったのではないか。

そのせいで、うまく頭の中から、面白いことが引き出せないんじゃないか。そんな劣等感にさいなまれる。

もちろん、今までが無駄だったとは思わないけど、もっと早く気づいていればと、悔やむ思いだ。

今の教育が間違っているかどうかは知らない。ただ、今の教育の形であっても、自分の心がけ次第で、ほんとうに大切なことを見抜いて、本当に使える知恵を、自分の中に養い得る可能性はあったのだ。それを思うと「失敗したなあ」と思ってしまう。

もちろん、これからだって、遅くはない。これから、ほんとうに大切なことを、大切にすればいい。また、勉強をやり直したっていい。

ひとつひとつが、ひとりひとりが、一回一回が、みんな違う。それを大切にして楽しめれば、僕はもっと、面白いことを考えられる人になれるのだと思う。

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