10月に読んだ本の話。
神様の裏の顔
書いたのが、藤崎翔さんという、元芸人の方。横溝正史賞みたいなのを取っているらしい。
「まあ、元芸人の素人が書いたにしては、よく書けているじゃないか」くらいの感想を抱こうと思って、読んでみたところ。これがすごく面白い。
第3章くらいから、続きが早く読みたくて仕方ない感覚になる。
この面白さを僕が今まで見てきたもので、カテゴリー分けするなら、『キサラギ』という映画と同じ枠に入りそうだ。登場人物の証言で、どんどん新しい事実が明らかになってゆき、どんでん返しもあるような展開。
さすが芸人さんというだけあって、笑える部分もある。「盗聴」と「登頂」を取り違えたまま、会話をするシーンは特によかった。勘違いからくる笑いを小説に盛り込むということは、僕も密かに研究していたことであるが、この小説は、それを見事にやっている。
本のうしろの方に、その選考委員の人たちの評が載っていて、真新しさは感じないとか勝手なことを言っているけど、こんな面白いものを書いてもダメ出しされるのでは、僕など、何も書きたくなくなる。僕は普段小説を読まないからわからないが、本当にこの人たちは、これより面白いものを書いているのだろうか。
確かに、僕も最後の方は無理矢理ひっくり返した感を感じたけど、それがダメだというなら、完璧を求めすぎである。この小説ではなく、完璧を求めすぎる自分を改めるべきだと思う。そうじゃないと、人生何も楽しめないよと言いたい。
「小説」として(特に「ミステリー小説」として)評価すると、厳しい目も入るのだろうが、他と比べずに、もっとゆるく、文章のエンターテイメント的な見方をすれば、文句なしで面白いと思う。「なかなかよく書けているじゃないか」くらいの感想を持とうとしていたことが申し訳ないくらいだ。尊敬する。
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