夏の恐怖体験

原付バイクで走行中、前方で、手押しのカートを転がしているおばあさんが道を横切ろうとしている感じだったので、止まって待つことにした。

すると、おばあさんは、その細い足で、ひょいひょいと、走り出した。

意外だった。ずいぶんなお年の方だったと思う。背中も曲がっているし、走りそうには見えない雰囲気だった。だけど、しっかり地面を蹴って、腿を上げて走り出したのだ。

急いで渡ろうとしてくれているのだろうか。この炎天下、そんなお年の人を走らせることに、多少申し訳ない気持ちにもなった。

ところが、道の真ん中あたりに来たところで、そのおばあさんが前に進まなくなった。

カートにつかまったまま、その場で、ぴょんぴょんと跳んでいるだけで、壁に向かって走っているゲームのキャラクターみたいに、前に進んでいないのである。

そして、こっちを見て笑っていた。

怖い。

何?

とりあえず、会釈をして、おばあさんの後ろ側から通った。

怖かった。何か呪いをかけられた気分だった。

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