「世界中の誰よりも」問題

恋愛ドラマとかの台詞で

「あなたが好きです! 世界中の誰よりも!」


みたいなのがよくある。


この台詞がよくわからない。


告白するとき、こんな台詞、絶対に使いたくない。


例えば、一般的な恋愛の文脈で、この台詞を男が女に向かって言う場合



  • 世界には、あなたのことが好きな男が他にたくさんいるかもしれないが、そいつらの「好き」よりも、オレの「好き」の気持ちが一番強い
  • 世界にはたくさんの女がいるけど、その誰よりもあなたのことが一番好き


の二通りの意味に取れる。


「誰よりも」というのは、男、女に限らず、親兄弟などを含めても、ということかもしれないが、ひとまず、それは置いておこう。


まず、二つの意味に取れる段階で、誤解される可能性が高い。


なぜそんな曖昧な言葉を選ぶのか理解できない。

さらに問題なのが、その内容である。

後者の意味なら別に問題は無い。自分の主観的な気持ちを、素直に伝えただけである。


ところが、前者の場合はかなり問題がある。


「他の誰の気持ちより、より自分の気持ちの方が上」と言っているわけだが、他の人の気持ちなど、わからないはずだろう。わからないくせに、他の人は、自分より下だと、勝手に決めつけてしまっている。


自分の気持ちが強いからといって、それをもって一番だと決めつけるのは、認識力が不足しているし、論理が破綻している。

「私は彼女がとても好きである。従って、彼女を一番好きなのは私である」

全く成り立たない。その結論を導くには、他の人と厳密に比較した上でなければならないはずである。

現実には、誰の「好き」が一番強いかなんてわかり得ない。「好き」の気持ちの強さは、計測できない。(というより、ひょっとしたら、永続的な愛情というのは、そんなに気持ちの高ぶるような、情熱的なものではないのかもしれないし、強さを比べるようなものでもない気がする)

なので、この台詞を言う人の「他の誰より好き」は、本当かもしれないし、違うかもしれない。それは誰にもわからないというのが、正しい認識であろう。

確実にはわからないことを、あたかも真実であるかのように言うことは、相手を騙す行為であり、不誠実で、自分勝手で、自己中心的な態度である。

さらに言うと、思い込みが激しく、他の人の気持ちを尊重せず、甘く見ている。自分のものにしたいあまりに、他の人を蹴落とそうという態度である。

人の気持ちを尊重せず、勝手に自分の下に置いてしまうような人が、「誰よりもあなたが好き、幸せにする」と言っている。信用できるだろうか。


「誰よりも」のなかに彼女の両親なども含まれているとしたら、命よりも大切と思いながら育ててきたご両親に対して「その愛情はオレ以下だけどね」と言うようなもので、とても失礼である。


本当に好きなら、他の人の気持ちは関係ないはずである。

人と比べなくても、「好き」に嘘がないなら、それに自信を持てばいいのである。


たとえ他に強い「好き」の気持ちを持った人がいたとしても、それでも自分を選んでもらえるようにアピールするべきなのである。


「オレが一番おまえが好きだ」などと、確かめられもしないようなことを言わずに、実際の態度や行動で示すべきなのである。



なんて、主張しても僕は、「そんな理屈っぽいこと言う人イヤ」と、モテなくなる一方なんだろうな。

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