滅多にないことだけど、年に一回くらい突如現れる。
奇しくも「うちの玄関のドアって、下からちょうどゴキブリ一匹入れるくらいの隙間ができてるな」と思いながら家を出た、まさにその日の帰宅後だった。
いままで出くわしたのは小さめのやつが多かったけど、今回のはそこそこの大きさだった。おやゆび姫と同じくらいの大きさである。おがくずを背負って地面を匍匐前進するコンバットスーツを着たおやゆび姫くらいの大きさをイメージしてもらえばわかりやすい。
さっそくキンチョールを持ってきて、たっぷり浴びせた。かなり効いたようで、裏返って、手足をじたばたしている。いや、おやゆび姫をまだイメージしている人はいったん忘れて欲しい。おやゆび姫にキンチョールを浴びせたわけではない。
とどめとばかりにさらにキンチョールを浴びせるが、いくらかけてもわさわさ動く。
もう周りの床もキンチョールの成分でびしょびしょなのに、まだ動いている。
なんという生命力。なんというゴキぶり。気持ち悪い。
もう抵抗の意志はなさそうなので、まだ少し動いているが片付けてしまおう。
問題は、こいつをどう処理するのかということだ。
手で持つのは嫌だし、ティッシュでくるむくらいでは、感触が伝わってきそうだし。なにしろ、まだ若干動いているのが怖い。
思案ののち、紙袋にほうきか何かで放り込んで、入ったら口を閉めてそのままゴミ箱に捨てようということになった。
でも紙袋がない。封筒ならあった。……これでいいか。
真新しい封筒で、すくうように中に入れて、綺麗に封をする。
……なんでこんな大切な扱いになっているんだろう。
……もし、これに宛先を書いてポストに入れたら……。
恐ろしい妄想をしながらゴミ袋に捨てる。
何か僕に容疑がかかって、家宅捜索で踏み込まれ、ゴミ袋をあさられたら……「怪しげな封筒を見つけました」なんてことになって……そのあと女性警官の大きな悲鳴が……。「俺が悪いんですか? 勝手にあさったのはそっちでしょ?」なんて弁解している僕。
変な妄想は止まらない。
封筒の中で休んだそいつが、やがて復活して動きだし、封筒の封を破って這い出し、ゴミ袋の結び目をほどき、外に出てくる想像をしかけたところでイヤな考えを強制終了。
みんなは、やっつけたあとのゴキブリをどう処分しているんだろう。なるべく近づかずにできて、近くで見ずに済んで、つぶしたりもせずに処理する方法があったら教えて欲しいものである。
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