早起きツイッター

話は今年、5月にさかのぼる。

僕(ユウヒ)と脳内秘書山岸、脳内軍師一宮の間で、会議が行われた。みなさんもよくやる脳内会議である。

早起きして仕事をする習慣を付ける方向で動いていたのだが、一向に早起きの習慣が身につかない僕に対して、軍師一宮がある提案をしてきた。

以下はその時の会議録の一部である。(秘書や軍師の人物像について、ここでは触れない。想像にお任せする)


▶5月の脳内会議録より


――前略(長いので前半はカット)

一宮「(早起きの習慣について)それ以上、だらだらのばしても永遠に身につかない可能性もあります。その間(修業期間の今のうちに)に習慣を作ってしまいたいところです。わたしはそう思いますが、ユウヒさんはどうですか?」
ユウヒ「うん。仕事がうまく行くか、実力がつくかどうかはともかく、そうなる仕組みはなるべく早く作りたいね」
一宮「それでは『いつか、そのうち』と言わずに、今すぐ、今日からでも、始めてみるのが最善ではありませんか」
ユウヒ「うん。そうだ。いいこと言うなあ軍師は」
山岸「自分のことですよ、ユウヒさん。言い方が人事みたいになってます」
一宮「中途半端かもしれませんが、早い方がいい。早速明日から、始めてもらいましょう」
ユウヒ「何を?」
一宮「早起きをです。早起きと言っても7時ですから、早起きの部類には入りません。本当は、もっと早く起きて欲しいくらいです。6時とか。そうしたらユウヒ先生が『6時起きなんて、そんな修行僧みたいな生活できない』というから、それなら7時でいいから確実に起きるようにしてくださいと、いつも言っているのです。7時でも、十分、朝の一仕事はできるでしょう。その積み重ねが大切なのです」
山岸「修行僧って……、ユウヒさん、修業してるんですよね」
一宮「ユウヒ先生には、これから毎朝7時に起きることを、意地でも習慣にしていただきます」
ユウヒ「はい。今までもそれに向けた取り組みはやってましたが?」
一宮「やるのは山岸さんです」
山岸「え? 私ですか?」
一宮「ユウヒ先生が、今まで朝起きられないことが多かったのも、秘書であるあなたの責任でもあるんですよ。ユウヒ先生に対して、甘すぎるのです。無理矢理起こして仕事をさせるくらいしなくて、果たして、秘書として仕事をしていると言えるのか……」
ユウヒ「いや、山岸さんは、いい秘書だよ。何がいいって、俺にプレッシャーをかけないから、すごくやりやすい」
山岸「ほら~、よかった~」
一宮「そこが、問題なんです。二人とも、のんびりしすぎです。あせるのはよくないと、散々助言して参りましたが、危機感がなさ過ぎます。のんびり同士で相性がいいのはわかりますが、このままだと、二人とも未来がなくなってしまいますよ」
山岸「ユウヒさん、聞きましたか? 私たち相性がいいそうですよ」
ユウヒ「そっちかよ」
一宮「……まあ、とにかく、明日から、山岸さんにやってもらいたいのは、ユウヒ先生をしっかり起こして、ツイッターで、ユウヒ先生が7時に起きられたかどうか報告することです」
山岸「はい・・」
一宮「7時起きなので、7時30分くらいまでには、報告してください。報告がない場合、寝過ごしたものと見なします」
山岸「はい」
一宮「7時30分までに、今朝、起きられたという報告があれば勝ち、起きられなかったという報告があるか、報告がない場合負けとします。山岸さんがツイッターをやることになっている期間は今年いっぱいなので、年末に何勝何敗になったか、成績を最終的に出します。その勝率がよくなかったら、山岸さんには秘書をやめてもらいます」
山岸「えええええええ!? まじですか?」
一宮「ユウヒ先生に時間を守らせないのは、秘書として仕事をしていないように、私には見えます。ユウヒ先生からすれば、その方が楽でいいのかもしれませんが」
ユウヒ「いや、俺が朝が苦手なのは、山岸さんが悪いわけじゃないから、それはどうだろう」
一宮「もちろん、私にその権限はありません。最終的に決めるのはユウヒ先生です。私も、意地悪で言っているのではありません。このまま、なあなあで行くより、ここでびしっと生活を改める道を提案したまで。私の提案に乗るか乗らないか。私からの挑戦と受け取ってもらってもかまいません。いったんやると言ったら、後でやっぱりやめると言ってもききませんよ。山岸さんのことも変更はなしでお願いします。どうしますか? やりますか?」
ユウヒ「もし『やりません』って言ったら?」
一宮「いままでの話の流れでそれはないでしょう。ま、本当にやりませんというなら、そのときは、私がユウヒ先生を見限って軍師をやめます。見込み違いでしたということで」
ユウヒ「わあ、じゃあ、やるしかないな。でも、できる気がする。大丈夫。山岸をクビにはしない」
山岸「でも最終的な勝率ってどのくらいですか?」
一宮「それは、これから決めましょう。できれば『毎日7時に起きる』のが目標ですから、毎日と言いたいですが、人間ですから、できない日があっても仕方ないことです。それでも『7時に起きる習慣がある』と言い切れるくらいが適切かと思います。二日に一日起きられても習慣があるとは言い難いでしょう。どのくらいなら、『習慣がある』と言い切れるでしょうか」
山岸「3日中2日とか?」
ユウヒ「8割くらい?」
山岸「ユウヒさん、あまり、ハードル上げない方がいいのでは?」
一宮「8割なら、私も文句はありません、私は一週間に5日くらいでも十分かと思ったのですが、ユウヒ先生が8割というなら、8割にしましょうか?」
山岸「ほら~、ユウヒさん」
ユウヒ「一週間に5日だと、8割より少ないの?」
一宮「71.4パーセントくらいです」
ユウヒ「じゃあ・・」
一宮「ここは男らしくご自身で宣言した8割にしませんか? それとも、楽な方に逃げますか? ユウヒ先生には8割なんて無理ですものね」
ユウヒ「いや、できる。8割でいってやる」
山岸「ええ? ユウヒさん、山岸のクビが掛かってるんですよ~。軍師の挑発に乗っちゃだめですよ」
ユウヒ「いや、決めた。8割。上等だよ、やってやろうじゃねーか」
一宮「では、決まりですね。では、明日から、楽しみにしてますよ。山岸さん、勝敗の管理をお願いしますね。では、私は今日はこれで・・」
山岸「ユウヒさん~、大丈夫なんですか~?」



そうして、ツイッターで早起きしたかどうか、勝敗という形で記録する日々が始まった。



そして、12月、この戦いに決着がついた。

実際のツイッターを見ていただこう。

そして早起きツイッターが始まった


5月、6月。いきなり連勝街道


7月も順調に勝ち星を伸ばす

8月も順調

9月は絶好調


10,11月はマンネリと寒さで停滞気味になるが、どうにか乗り切る
そしてついに12月、ついに完全決着
こうして、無事ナカイユウヒは早起きの習慣を身につけることができたのだった。


意志の弱い僕が、一人の力で早起きの習慣を身につけるというのは、なかなか難しいことだった。

だが、秘書と軍師の力を借りて、どうにかそれができた。二人には本当に感謝したい。一人の力は小さくとも、仲間の力を借りることで人は成長するものだと思った。


来年は、山岸に変わって、僕がちゃんとツイッターをやってみようと思う。

よろしくお願いします。

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