問題
とある人里離れた島があります。この島には人が暮らしていますが、他の土地との行き来は滅多にありません。さて、この島には二人だけ美容師さん(どちらも男性です)がいて、2軒だけ美容室があります。
この二人を美容師A,美容師B。この2軒を美容室Aと美容室Bとします。
美容室Aの店主である美容師Aさんはとても整った髪型で、顔立ちも精悍。いかにも「できる男」と言った風貌。
一方美容室Bの美容師Bさんは、前髪はガタガタ。後ろ髪も乱雑に刈られたような印象の髪型です。
この島には他に髪を切ってもらえそうな場所はありません。
さて、あなたがこの島で髪を切ってもらうとしたら、どちらの美容室に行けばいいでしょうか?
A:美容室A
B:美容室B
答え
この二人がお互いの髪を切っていると考えると、整った髪型をしている美容師Aさんの方は、美容師Bさんに髪を切ってもらっていると考えられるので、Bさんの方が腕がいい。
そう考えたあなたは美容室Bに行きました。
「あの、カットをお願いします」
美容師Bさんは「お、お客さんセンスいいね。俺に任せておきな!」と、うれしそうに、ハイテンションで出迎えてくれました。
Bさんはこちらの注文も聞かずスプレーで髪を濡らすと、チョキチョキとカットを始めました。
しばらくして「できたぜ! 鏡で見てみな! 最高にファンキーっしょ」と言われ、できあがった髪型を見てびっくり。前髪がガタガタです。
「いや~、俺の前髪ガタガタカットの良さがわかるなんてお客さんセンス最高!」
あなたはその結果に唖然としていると、
「あれ? ひょっとして、俺みたいな髪型になりたくて来たんじゃない感じ?」
あなたは頷いて、もう一人の美容師さんの髪を切ったのはあなたではないんですか? と質問してみました。
「ああ、あいつはこの髪型の良さがわからないらしくてさ。他の土地には滅多に行き来できないけど、たまに行ったときに切ってもらってるみたい。あとは美容師じゃないけど、奥さんに切り方教えて、伸びた分は切ってもらってるらしいよ」
じゃあ、あなたの髪を切ったのはもう一人の美容師さんではないのですか? と質問してみました。
「うん、これは俺が鏡を見ながら自分で切ったんだよ。このあえてガタガタに切る前髪がポイントでさあ。いままでの概念を覆す新しい髪型なんだ。一見適当に見えるけど、ここからここまでの長さは、この長さの倍になっているし、こことここの長さの比率は「黄金比」になっている。不調和の中に調和が潜んでいるんだ。研究に研究を重ねてたどり着いた、俺の最高傑作。まあ、さすがに後ろ髪は綺麗に切れないから、すきばさみで適当にすいているだけなんだけどね、でもこれはこれで気に入ってる」
……その、前髪ガタガタカット以外できないんですか?
「俺のところに来たやつは、問答無用でこの髪型にするよ」
美容室Aの方はどうなんですか?
「う~ん。俺から言わせれば本当に普通だね。腕も仕上がりも普通。あっちの美容室の方に行きたかった? でもさ、本当にそれでいいの? 無難な髪型で無難な人生送るだけだよ。この前髪ガタガタカットだったら、個性も出るし、注目も集まる。最高に自分らしく生きられると思うんだよ。人生はチャンスの連続。それを人の目を気にしてみすみす逃しているやつがいっぱいいると思うんだよね。この髪型はさ『俺はチャンスを逃さねえぞ、人の目なんて気にしねえ、自分の人生は自分で決める!』そういう『しるし』なんだよ『象徴』なんだよ」
……自分らしく生きるための「しるし」……。「象徴」……。
改めてあなたは自分の髪型をのぞき込むように見てみました。
そう言われてみると、確かにガタガタながら、どこか愛らしさを感じる前髪。一方で後ろ髪は綺麗に整えられ、かっこよく仕上がっています。
アンバランスとバランスが入り交じり、奇妙な世界を表現していて、不思議と「もっと見ていたい」と引き込まれるような感覚です。
前髪の斜めに切られた部分も、それをまっすぐにしてしまえば、きっと何の面白みもなくなってしまうだろうとしか思えません。
スタイリッシュで遊び心があって……。見れば見るほど新しくて、前衛的で、とてもかっこいい髪型に思えてきました。
そしてあなたは確信しました。そうだ、これこそが自分の求めてきた自分らしさなんだ!
心の奥底から喜びがこみ上げてきました。「ありがとうございます! とても気に入りました!」とお礼を言うと、美容師Bさんはにっこり微笑み、「ウチの店、初回はタダなんだ。支払いは次からでいいから。また来て」と、やさしく送り出してくれました。
生まれ変わったような、すがすがしい気持ちでした。きっと、Aの美容室に行っていたら、こんな素敵な気持ちにはなれなかったでしょう。
ということで、正解はBの「美容室B」でした。簡単だったかな?
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