台風15号の思い出

寝ようとしたら、台風が来た。

ガン! ガン!

と外ですごい音が鳴っている。風や雨の音ではなく、その音で眠れない。

なんとなくわかってはいた。その音は僕のせいだと。僕の部屋の外のベランダで鳴っている音だと。

しかし、寝ようと横になっていた僕は、なんとなく、確認するためにベランダの方へ行く気にならなかった。

音を聴きながら「ああ、たぶんうちの網戸だな」と思った。 サッシから外れやすい網戸だった。だから、網戸が外れて、倒れて、大きな音が鳴っているのかもしれない。僕のせいでアパート中の人に迷惑をかけているかもしれない。

でも、倒れてベランダの手すりにぶつかっただけなら、そんなに何度も音が鳴るのは変だとも思った。一回鳴って終わりじゃないのか?

じゃあ、やっぱりうちのせいじゃないかもしれない。隣のベランダにぶら下がっている首をつれそうな形の金属製のロープがどこかにぶつかってる音かもしれない。

いいや、無視して寝ちゃおう。しらばっくれて寝に入ることにした。

しかし、台風の風も、その激しい音もやむ気配はない。

一生懸命眠ろうとしたが、そのあまりにでかい音と、自分のせいかもという罪悪感で寝付けそうになかった。

それから、2~3時間、断続的にそのけたたましい音は鳴り続いた。

僕も、どのタイミングで網戸を直しに行けばいいのかわからなくなっていた。

周りに住んでる人は「誰だよ、なんとかしろよ」と思ってイライラしてるんだろうな。眠っていたから気付かなかったってことにしたいなあ。

もし僕が直そうとしてベランダに出たら、その瞬間「なんで今までほっといたんだ」怒鳴られるんじゃないかという緊張さえある。

深夜3時半。意を決して、ベランダの状況を確認してみる。

手すりに寄りかかるように倒れている網戸。

やっぱり網戸が倒れていたか……。

次の瞬間、強風で、手すりに寄りかかった網戸がふわっと立ち上がる。

ガン!

再び手すりにたたきつけられる網戸。なるほど。そういう仕組みで何度も音が鳴っていたのか。

「ししおどし」みたいなものだな。風情があるじゃないか。

この風の中、網戸を直すのは難しいと判断。網戸を部屋に取り込んだ。

アパートの皆さん。長時間放置してすみませんでした。

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