同窓会だって

中学の同窓会のお知らせなるものが、いきなり届いた。往復はがきである。

「数日後、同窓会のお知らせをお届けします」というお知らせを前もって届けておいてくれれば、心の準備もできたのに、いきなりだから、結構焦る。

同窓会など、僕には関係ない話だと思っていた。それがあるのは、どこかの国の少数民族の話で、僕の生まれた地域にそういう風習はないものだと思っていた。

だが今回は、呼びたくなくても一応全員に声をかける決まりになっているらしく、僕のところにも来てしまった。

いままで一度も、同窓会のお知らせなど来なかったから、僕のことを忘れてくれたのだと思って、安心していたのに。 「天災は忘れた頃にやってくる」とはよく言ったものだ。

これを見た僕の第一声は「勘弁して下さい。どうか僕のことは、忘れてください。放っておいてください」だ。

中学時代なんて、僕にとってはトラウマだらけなのだ。碌に人と会話もしないまま卒業した学校だ。いまさら、行ったところで自分の居場所なんてあるわけがない。

そこに顔を出すなんて、まず無理だ。この気持ちは、ずっと登校拒否している生徒に近いのかもしれない。

もちろん行くつもりはない。成人式も行かなかったのだ。

そもそも、参加費の7000円。僕に払える余裕など、あるわけがない。そんな大金、どこを掘れば埋まっているのか皆目わからない。



同窓会の案内が来たくらいで、そんなに焦る必要もないのだが、いざ受け取ると、胸をかき乱されるものだ。

たとえば、幹事の女子の名前には括弧書きで、旧姓何々などと書かれている。何か苗字の変わるようなことがあったのだろう。そのことにも多少動揺してしまう。

彼女のことは覚えている。当時の僕は、そばにいる人が、みんな僕に対して腹を立てているに違いないという被害妄想の中にいた。だが、彼女は違った。彼女の隣の席になったときは、とても心が安らいだ。

彼女は、クラスの最下層の、誰にも相手にされず、馬鹿にされていたであろう僕に対してすら、とてもやさしかった。快く教科書を見せてくれたし、「隣や近くの席のひとと相談して、答えを発表しなさい」などという課題が出たときは、他の人のように僕を無視せず、笑顔で楽しそうに話を聞いてくれた。

彼女だけでなく、同級生の色々な人に、色々なことがあったんだろう。一応知っている人達の色々。それを思うと、精神が持たない。

時の流れの切なさが、ただただ、胸にしみる。



たかが、同窓会。たかが、はがき。

無視したいところだが、死亡説とか流れて、探されても迷惑だから、一応返事は出そう。

「欠席」に丸をつける。

住所や電話番号を書く欄には何も書かない。なにしろ放っておいて欲しいのだから。

その他に、何か言葉を添えた方がいいのだろうか。近況を書くとか。

「EXILEのメンバーをやっています」

いや、これだと、放っておいてもらえなくなってしまう。



結局「虫の息ですが、生きています」と添えて出しておいた。


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